今年の日本シリーズは、二人の「オレ流」の対決で
面白かった。
華麗なプレーに派手なパフォーマンスの新庄選手と、
一見、無表情、無愛想とも見える元祖「オレ流」の監督。
「汝の道を行け、人をして語るにまかせよ」をゆく、自他
共に認める、「オレ流」の二人に興味津々だった。

 よって、この際、つむじ曲がりのおやじとしては、
「オレ流」について、独断と偏見で、アレコレ考えてみる
ことにした。

 オレ流は、迎合せず、悪弊に与(くみ)しない

 落合は、天与の野球の才があったのか、高一で
いきなり4番を打ったため、上級生からはいじめられ、理由もなく殴られた。

 卒業後、東洋大学に進学するが、半年で中退し、秋田に帰ってしまう。先輩がタバコを手にしたら
素早く火をつける、等といった体育会系独特の1年奴隷、2年兵隊…といった古い慣習が我慢ならなかった。
「照れ屋で繊細、だが、腑に落ちないと強情をはる
のが落合博満の気質である。」
と、ノンフイクション作家加藤仁氏が書いている。
その、加藤仁氏が紹介しておられる、大学を中退した
ときの母親ユキさんの言葉が素晴らしい。
「いいわさ、べつに悪いことやったんじゃない。博満は
わたしが育てた子だ。大道から片輪たりとも外しちゃ
ならんと教えてきた子だ。バカが化けたんじゃない。
時節が来るのを待てば、ひとりでに芽生えてくるんだ
から。自分で自分の道を選べば後悔ないもん。」
この母にして、この子あり、大したお母さんだ。

 文系人間の、つむじ曲がりのオヤジとしては、理不尽
な悪弊に迎合しない落合選手こそ、真っ当な神経の
持ち主、と大いに共感を覚えるのだ。
つまり、長いものに巻かれることを嫌い、悪い慣習に
敢然と立ち向かう反骨の精神こそ、「オレ流」の神髄、
バックボーンと看破する。

 オレ流は、周囲に惑わされず、信ずるところを貫く

 その後、落合は、才能を惜しんだ恩師の勧めもあって、東芝府中の野球部に入る。そして、25歳の時、
ドラフト3位指名でロッテオリオンズに入団するが、
落合にとって時代は逆風だった…

当時は、レベルスイング全盛の時代で、山内監督は
レベルスイングの本尊どいえる人物だった。一見
アッパースイングの落合は、使い物にならない、と
監督・コーチ・評論家たちから酷評される。
角を矯めて牛を殺すという言葉があるけれど、有望な
素質のある選手も、寄ってたかって、伸びるべき芽を
摘み取られてしまうことがよくある。
 落合は、 周りの雑音に耳をかさない一方、、土肥
捕手から柔らかいリストの使い方、高畠コーチから球種
の読み方を学んだという。
   
落合は、自分の信じる所を貫き、人一倍努力して、
入団3年目で首位打者、4年目で3冠王を獲得する。

新庄の場合も、天真爛漫、奔放なスタイルを受け入れ
てくれる場を得て、その価値を発揮することが出来た
のだろう。


 オレ流は、人の心も解る、情の人でもある

 落合は、オレ流を公言して一匹狼のように見えるが、
実はチームメートに対しては優しく、面倒見もよく、
信奉者が多かったという。
「選手の労をねぎらうのは監督の役目」と投手交代の
ときは自らマウンドに行くし、ビンチの時も表情一つ
変えない。選手が安心してプレー出来るようにとの
心配りだと思う。

 新庄については、「派手な雰囲気を振りまく一方で
周囲に対する気遣いも人一倍強く、パフォーマンスを
行う際には、必ず事前に相手チームや監督・コーチ・
先輩選手などに了解を得るなど周到な根回しを行っ
ていた。チームメイトからは『新庄ほど気配りをする
選手はいない』と言われるほどで、その人柄のよさも
人気を支える一因であろう。」

         (フリー百科事典『Wikipedia』 新庄剛志の項)
オレ流と言っても、唯我独尊、孤高の人でないところ
が嬉しい。それどころか、優勝して大粒の涙を流す
情の人に、つむじ曲がりのオヤジとしては親近感を
覚えるのだ。


 一流のオレ流は、実績がモノをいう

 理屈や態度ではなく、素晴らしい実績を伴ってこそ
人は納得し、認めるものだ。
 新庄は、ベストナイン3回、
ゴールデングラブ賞8回
オールスター7回出場し、
打率よりもチャンスに強い打撃が
光る。札幌ドームを満員するのが
夢といって実現してしまった。
 落合は、3度の3冠王、監督3年
で2度のリーグ優勝、数々のタイトルを獲得し、最高のプロ野球選手と言っても言い過ぎでない。


 こうして考えてみると、ひとくちにオレ流と言っても
ただの偏屈、我流、自分の考えに固執して人と協調し
ない一匹狼とは大違い。オレ流には、オレ流を貫か
なければならなかった事情と、道理があったのだ。
 オレ流もピンからキリまで。オレ流を究めた二人は
天晴れと言うべきか。

本物のオレ流は男の本懐…。
2006年に輝いた、「オレ流」に乾杯!

 参考
   ・フリー百科事典『Wikipedia』 落合博満の項
   ・「俺流プロフェッショナルの知られざる素顔」
             ノンフイクション作家 加藤 仁
   


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