今年の阪神タイガースは調子がいい。
リーグ優勝も目前である。
テレビで阪神タイガースの試合中継がある日は、朝から、夕方になるのが待ち遠しい!
勝った日は、最終のスポーツニュースまで、ご満悦でハシゴする。
 それに、今年は、もう一つ楽しみが増えた。
星野監督のホームページ 「星野仙一のトラ、トラ、トラ」(http://hoshino.ntciis.ne.jp/) である。
試合が有っても無かっても、毎日、星野監督自身のコメントがあって、並の新聞記事よりずっと面白い。


 そのHPのなかの「仙一のコーヒーブレイク」というコーナーに、星野監督がオヤジさんと慕う川上哲治元巨人軍監督の本が文芸春秋社から出版されたと紹介されていた。
面白そうなので、本屋さんに探しに行った。
何種類もの阪神タイガースや星野監督に関する本は山積みされていたが、川上元監督の本は見つからなかった。

その代わり、「勝利への道」(文春文庫420円)という本を見つけた。中日時代の平成12年に出版したものに、タイガース監督を引き受けた平成14年3月に一部加筆して文庫本として再版したものである。
「数少ない私自身の著述である。」と序文にあるとおり、本音が語られていて興味深かった。

 目次から主な項目をひろってみると、
・私の監督論
・師との出会い
・私の組織論
・私の教育論
・妻と私
・二十一世紀の球界のために
となっていて、星野監督の持論が率直に語られている。
なかでも、「師との出会い」の中で、明治大学野球部時代の島岡監督の想い出を語っている部分が秀逸である。

 4年生でキャプテンだった星野投手が、対早大戦で4回KOされ惨敗したとき、雨の降る夜中、
島岡監督に呼び出され、二人ともパンツ一丁で、「神様申し訳ありません」とひざまずき、頭を地面にしっかりつけてグラウンドの神様に2時間以上も謝った。
島岡監督は、「グラウンドで技術、体力、人間を磨くことが出来るのは、グラウンドの神様のおかげなんだ。」といつも本気で言っていたという。

 また、キャプテンには三つの役目があった。
 一番目の便所掃除は、普通、下級生の仕事なのだが、島岡さんは、「どんなことでも、人の嫌がること、つらいことこそ先頭に立って上の者がやるべきなんだぞ」という考え方で、最初の日は、自分でたわしと雑巾を持ち、「こうやるんだ」と手本を示したという。キャプテンの一年間は、毎日便所をピカピカに磨くのが日課だったそうだ。

 二番目は運転手役。
監督や外部の来訪者を乗せて運転するので、礼儀作法、言葉づかい、服装、時間厳守など、普段の生活の上でのさまざまな気配りの修養になったという。
 三番目は、明け方、監督が目を覚ました時間に監督室を訪れ、その日の予定など意見を具申すること。

 島岡監督は、裏表がなく、異常なほどの熱情家、激情家で怖い人ではあったけれど、それに匹敵する優しさもあわせ持ち、自分の息子ほどの年の選手の声を聞く、公平な思想の持ち主であった。単純なワンマンとは程遠い、本当の意味での威厳を持った教育者だった。
厳しさと激しさのなかでこそ人は伸びる、とする指導者としての哲学、私の野球人としての原点は、この島岡のオヤジにかなりの部分を負っていると思う、と星野監督は述懐している。

 
 星野監督の、抜群の指導力、魅力溢れる人間味、熱情・闘志は、生来のすぐれた資質の上に、厳しい鍛錬、いろんな人とのふれあいの中で修得されたのだろうと思うと、興味が尽きない。

 「われらが星野監督に乾杯!」である。


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