gifアニメを使わせてもらいました



 「ゴルフ好きにも三つのタイプがおますなあ。」
クシとハサミをせわしなく動かしながら、散髪屋の主人は言った。
「一つめは、ゴルフ談義というか理屈が好きなタイプ。
 二つめは、いろいろと道具やコースに凝るタイプ。
 三つめは、プレーそのものを楽しむタイプ。」
「上手いこと言うなあ…。」
と相づちを打ちながら、心の中で、さしづめ私は二つめのタイプやなあと苦笑した。 

 私の場合、ブランド品や舶来ものに全く関心はないのだけれど、何かに興味を持って始めようと思うと、先ずアレコレ道具を揃えて、本屋さんに行ってやたらと入門書(手引き書)の類を買ってくる。そして、どこかの教室に習いに行くのでもなく、いつも我流で中途半端…。このパターンは不思議と一貫している…。

 30代の頃、図工の教諭が子ども達の粘土の作品を灯油窯で焼いているのを見て、やきものに魅せられた。
さっそく、カタログをめくって灯油窯や電動ロクロ、信楽の粘土300kg、釉薬や成形用具など、つぎつぎ買い揃えて、休みを待ちかねて夢中になった。
けれど、灯油窯のバーナーは「ゴォーッ!」ともの凄い音をたて、隣のご主人が何事ならんと飛び出してきた。粘土をこねて形を作り、削って、陰干し、日干し、素焼き、釉薬かけ、本焼きと何日もかかる。おまけに素焼きの時は、十分に中の空気が抜けていないと、「ボーン、ボーン」と派手に破裂する。本焼きにすると温度加減が難しく釉薬が流れたり、まだらになる。出来たものは分厚くて重い。買った方が何倍も安くつく…。
そのうちに熱がさめて、窯もロクロも粘土も、物置の奥で深く静かな眠りについてしまった。

 40代のころは、木工に夢中になった。
電気ドリル、ドリルスタンド、ジグソー、電気カンナ、丸ノコ、工作台、サンダー、ドライバーセット、いろいろな長さのねじクギやクギなども揃えた。
テレビの日曜大工の番組にくぎづけになって、ホームセンターに行っては、紫檀やケヤキの木ぎれを買ってきた。2、3年して熱がさめた。
この前、餌台を作ろうと、電動工具を久しぶりに物置から出したら、サビ付いていて、動かすのに苦労した。

 長く続いているという意味での例外は、カメラとパソコンかもしれない。
 子ども達の遠足の写真を写すことから始まって、すっかりカメラと写真が好きになった。ハーフサイズ機械式のカメラからオートフォーカス一眼レフまで、10台近いカメラとたくさんの交換レンズを買い揃えた。それは、なかなかシャープでクリアな満足できる写真を写せなくて、よいカメラやレンズを使ったら、よい写真を写せるに違いないと信じ、「ベスト OF ザ・イヤー」に選ばれた話題のカメラを追いかけたから…。
そのうち、他にも手ぶれやピンぼけ、幸運なシャッターチャンスとの出会いなどいろいろな要素があることに気づいた。しかし、懲りもせず今も、レンズ交換式のデジタル一眼レフ中級機の発売を心待ちにしている…。
 パソコンはBASICからMS−DOSになって、初めて5インチフロッピーディスクを装備したNECのPC−9801VM2を買って以来、今のWindows2000まで6、7台買い代えてきたと思う。CPUは8MHzから始まって今は1ギガの速さ、1メガ1万円したハードディスクが80ギガ標準装備。パソコンもソフトも、日進月歩、めざましく機能が充実してきて多様な使い方が出来るようになり、お金はかかるけれど面白くて飽きることがない。
お陰で、定年退職後も退屈するひまがない…。

 去年の秋、古くなって動かないDOSパソコンと写らなくなったディスプレイ、裁断した500枚以上の5インチフロッピーをダンボール箱につめて、粗大ごみに出そうと玄関の外に置いておいたら、朝早く、清掃業者より先に誰かが持ち去っていた …。
ひょっとしたら、使えると思ったのかもしれない。
後で、困っていないだろうか? 気になっている …

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